コラム

パワハラにあった時の、具体的な対処法① パワハラ加害者の特徴と攻撃パターン

Oct 2, 2024

日々起きているパワハラ問題

兵庫県の斎藤知事のパワハラ問題がニュースで取り沙汰されていますが、正直氷山の一角であり、一般企業でも日々パワハラ問題は起きています。実際に、今まで多数の候補者の方々からパワハラにあった話を聞いてきましたし、私自身、過去に酷いパワハラを受け、カウンセリングに通い、訴訟準備までしました。

今回は私の実体験も踏まえ、パワハラにあった時の具体的な対処法をお話したいと思います。過去にパワハラにあい深い傷を負った方、まさに渦中で大変な思いをされている方のお役に立つことができましたら幸いです。

パワハラをする人の特徴と、その背景

パワハラをする多くの人の特徴として以下の4点があげられます。

① 自分は特別で、常に正しいと考えている
才能、知能、業績、外見などにおいて自分は他者よりも優れていると過大評価し、そんな自分は常に正しいと考えている。また、他者を見下し過小評価する傾向もある。

② 共感性の欠如
相手の立場で考えること、相手の痛みを理解することができないため、相手の気持ちを自分の都合のいいように決めつける(某知事の「道義的責任が何かわからない」という発言は、この共感性の欠如から来ていることがわかります)。なお、「共感性の欠如」だけでも100人に1人はいるそうです(中野信子著『サイコパス』より)。

③ 他者をコントロールしようとする
自分の目的達成のために、怒り、脅し、嘘、時に「かわいそうな自分」を演じて同情を誘い、他者をコントロールしようとする。

④ 相手によって態度を変える
上司にはごまをするが、アシスタントなど自分より立場が低いと思う相手には傲慢な態度をとる。

これらは、いずれも「自己愛性パーソナリティ障害」のもつ特徴です。
(参照:MSDマニュアル家庭版 自己愛性パーソナリティ障害

「自己愛性パーソナリティ障害」や「自己愛性が強い」人達には、私たちの一般常識は通じません。彼らは、自分が決めたルールに沿わないというだけで、相手をターゲットにします。

また、彼らは「自分の間違いを認めることは死に値する」「自分に異を唱えるものは敵」と考えているため、嘘や権力行使などありとあらゆる手段で自分の正当性を主張、周囲をコントロールし、徹底的にターゲットを攻撃、言うことをきかせ、それがかなわないと排除しようとします。

私が一番驚いたのは、彼らは息をするように嘘をつくことです。あまりに自信満々に嘘をつくので、一瞬こちらが間違っているのではないか、と錯覚してしまうほどです。しかし、彼らの場合、「事実が歪み、“嘘を事実”として脳が認識」しているため、嘘をついている自覚すらないのだと、カウンセリングを通じて学びました。

まずは強弱はあれど、このような「自己愛性パーソナリティ障害」「自己愛性が強い」人達が世の中にいること、そして彼らに私たちの一般常識は通用しないことを理解するだけでも、パワハラを受けた際に混乱に陥ることを避け、冷静な対応が可能になるかと思います。

パワハラ加害者の攻撃パターン

パワハラをする人の攻撃は、相手を罵倒する、物を投げるといったあからさまなものから、相手を心理的に追い詰めていくやり方まで様々です。彼らの攻撃から身を守るために、攻撃手法のパターンをご紹介します。

● 憤怒
最もわかりやすい例です。高圧的な言い方をし、罵り、相手の人格を否定する発言を繰り返します。

● “嘘を事実”として信じ込ませる(ガスライティング)
彼らは平気で嘘をつきます。事実をなかったことと思い込ませる嘘、起きてもいないことを事実と信じ込ませる嘘。巧みな嘘で相手を操り、その人の記憶や経験、出来事の理解を疑わせることで、現実認識能力を狂わせていきます。

嘘や誤った情報で心理的に相手を操り、正常な判断力を奪う行為は「ガスライティング」と呼ばれ、映画『ガス燈』(1944年)が由来です。

映画『ガス燈』の紹介:
19世紀ロンドン。たった一人の身寄りである伯母が殺害され、遺産を相続したポーラ。やがて彼女は心優しいグレゴリーと結婚、亡き伯母の家で暮らし始めるが、その家で不可解な出来事が続く。大切な物が紛失、部屋のガス燈がふと暗くなる、屋根裏から聞こえる足音・・・。しかし夫は、それらは全てポーラの酷いもの忘れ、盗癖、幻覚、幻聴であるときつく叱責するようになり、ポーラはやがて自らの正気を疑い、精神的に追い詰められていく。

● 論点のすり替え
パワハラをする人は、自分を正当化するために様々な言い逃れをします。相手がメールや音声データなどの証拠を基に主張してくると、彼らは滔々と言い逃れをし、全く異なる論点へと話をすり替え、やがて相手を攻撃するのです。よくあるのが、過去の細かい事象の蒸し返しや精神論へのすり替えです。

● 罪悪感を植え付ける
「チームのAさんもあなたが迷惑だと言っていた」「アシスタントのBさんは、あなたのサポートは苦痛だと泣きそうだった」など、相手にとても近しい人の話を持ち出し、罪悪感を植え付けます。もちろんこれも嘘、または200%盛って話しているケースがほとんどです。

● 脅し
「あなたが態度を変えないと〇〇になるけど、どうする?」など、ネガティブな条件を出して脅してきます。

● 自分を被害者に仕立て上げる
彼らは「自分は被害者、相手が加害者」と本気で思い込んでいるため、相手の行為すべてを悪意あるものと判断します。相手が業務上正しい指摘をしてくると、「あなたの指摘のためにプロジェクトが遅延している」と、「かわいそうな自分」を演出、周りの同情を買うことで相手を悪者にします。

● ネガティブキャンペーン
パワハラをする人は、プライドが高く自分の批判に耐えられないため、事実と異なる噂を流し、相手が周りの信頼をなくして孤立するように仕向けます。

 

私がパワハラを受けていたときは、いつ、どこから、どのような攻撃が来るのか全く分からず、論点が二転三転し、事実と異なる話で責任を問われ、精神的に追い詰められていきました。このような心理的攻撃が、罵声や暴力よりもずっと多いのが現状です。

パワハラ加害者には上記のような攻撃の可能性があると事前に知っておくこと、また対面時には、パワハラ加害者の目を見ず、眉間を見ることで、「何を考えているかわからない」と思わせ、精神的に優位に立つことも効果的です。

「自己愛性パーソナリティ障害」の人の根底にあるものは、圧倒的な「不安や自信のなさ」です。それらと向き合うことができないので、相手を攻撃、コントロールし、自分の正当性を主張することで、弱い心を保っているのです。

これは、半分は遺伝(特に共感性の欠如)、半分は幼少期の親との関わり方にあり、「自分の間違いを認められない」という特徴も加わって、反省することもなく、変わることはほぼないと言われています。

以下の書籍や動画も参考にしていただければと思います。
中野信子著『サイコパス』文藝春秋
向後義之著『人間関係のレッスン』講談社
中村りんの心理学研究所

次回ブログでは、実際パワハラにあってしまった際の具体的な対処法についてお話させて頂きます。

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