パワハラにあった時の、具体的な対処法② 注意点、休職、転職、訴訟など
前回のブログから、パワハラ加害者に見られる人格や気質、心理的に相手を追いつめる攻撃パターンをご理解頂けたかと思います。今回は、実際にパワハラにあった時の具体的な対処法をお話させて頂きます。
前回のブログはこちらをご覧ください。
具体的な対処法
社内メール、チャットに気を付ける
社内メールやチャット(Teams, Slackなど)は、基本的に情報システム部によっていつでも監視やチェックが可能です。些細な内容で揚げ足を取り、会社が注意勧告や脅迫、懲戒処分を言い渡してくる可能性もありますので十分に注意してください。
証拠となるデータを集める
自分自身を守るため、また今後どのような選択をするにも「パワハラを受けた証拠」を残しておくことに損はありません。具体的には、音声データ、メール、日記です。
パワハラにあい、事が大きくなってくると当該上司や人事から頻繁にミーティングに呼ばれると思います。その際、必ずミーティング内容を録音しておきましょう。Apple Watchを使うと、録音開始時に音がしないのでスムーズかと思います。
メールに関しては、会社から個人のアドレスへ転送すると「機密情報の流出」と捉えられます。会社でプリントアウトして保持しておくのが良いかと思います。
また、いざ訴訟をすると決断した際には、いつ、どこで、だれと、何があったかを時系列に弁護士に報告することになります。弁護士は、その情報から訴訟の判断や戦略を立てますので、日記に詳しく残しておくことが大切です。
休職をする
パワハラを受けることで、精神的にも肉体的にも多大なダメージを負います。心と身体の状態を整えるため、早急に休職し、戦場から脱出しましょう。
まずは「就業規則」で休職の規定を確認してください。医師の診断書をもって人事に相談すれば、ほとんどの場合休職が可能です。休職中は、月額給与の6割が社会保険から支給されます。休職期間は一般的に3カ月~6カ月、休職中は毎月または2か月ごとに医師の診断書を人事へ提出します。
私がパワハラを受けていた間は1週間で5時間しか寝られず、ストレスによる線維筋痛症を患い、その後も3年以上通院しました。適応障害と診断された知人もいます。一度メンタルや体調を崩すと回復に時間がかかり、仕事にも生活にも大きな影響を及ぼします。まずはしっかり休息をとってください。
転職をする
転職をするという判断をされる方がほとんどかと思います。もし体調が回復してきているなら、休職中に転職活動をすることをお勧めします。
休職中でも在職であることに変わりはありませんので、履歴書にブランク期間は発生しませんし、社会保険も間をあけずに移行が可能です。ただし、症状が重い方は必ず医師と相談しながら進めてください。
注意して頂きたいのは以下の3点です。
① 転職活動はメンタルと体調が整ってきてから
心と身体が整っていないと、面接時に必ず出てしまいます。まずは心身を整え、焦りではなく前向きな気分になってから、転職活動を始めましょう。カウンセリングも効果的です。
② 面接時の転職理由は前向きに
転職理由は「パワハラを受けて」と正直に伝えることは控えましょう。あなたのことを良く知っている方がいる会社の面接では、正直に伝えても理解を得られると思いますが、初見の場合受け取り方は様々です。転職理由はポジティブなものを選ぶと良いでしょう。
③ 転職活動は秘密裏に
「休職中=仕事ができない状況」ですから、もちろん転職活動などできない、ということなります。転職活動は、絶対に現職の会社に情報が漏れないように進めることが大事です。ご本人の許可もなく、勝手に企業へレジュメを提出する転職エージェントもあるようです。くれぐれも気を付けてください。
上層部へエスカレーションする
パワハラをしている人物が直属の上司である場合は更にその上の上司へ、所属している組織が子会社である場合は親会社へ、パワハラの事実をエスカレーションし、改善を促すことも可能です。
しかし、残念ながら、エスカレーションをした人の95%以上が、その後退職に追い込まれています。喧嘩両成敗ではないですが、エスカレーションする社員も組織にとっては危険人物とみなされるのかもしれません。
大手企業の場合、社内に相談窓口を置いていますが、その窓口も結局は「パワハラをしている組織の一部」で、パワハラ被害者の味方にはなってくれません。「窓口は人事ではないから何の権限もない。異動などの対応もできない」と返ってきます。
もし、エスカレーションを考えている場合は、転職が決まった後、または退職後、タイミングを見計らって進めていくことをお勧めします。
訴訟をする
最後に、訴訟をするという選択です。これも転職が決まった後、または退職後に行うことをお勧めします。退職後でも、事象から2年間は訴訟可能です。
まず、弁護士選びですが、世の中の80%以上が「雇用主の立場でパワハラ問題を解決する」ことに長けた弁護士です。必ず「従業員の立場でパワハラ問題を解決する」ことが専門の弁護士を選びましょう。
次に、弁護士事務所にアポを取り、証拠データと日記を持って相談に行きましょう。音声データは文字おこしサービスを使い(最短2日ほどで文章化されます)、文書で持参すると良いと思います。相談料は初回30分無料、その後1時間1万円が一般的です。弁護士の先生も様々な方がいらっしゃいますので、何名かと面談し、気が合う方にお願いするのが良いと思います。
パワハラの訴訟の費用は、60万円~90万円が一般的と伺いました。裁判は、基本的にすべて「お金」で問題を解決するというアプローチになります。
ただ、日本の現行法では、パワハラを受けただけでは大した金額を要求することができず、マイナスかトントン、が一般的だそうです。メンタルに大きな傷を負い、損害賠償を高く請求したとしても、裁判で戦うには精神科医の協力が必須であり、時間もコストもかかる裁判に協力してくれる医師を探すのは困難です。
裁判期間として1年以上かかるケースもあり、その上お金を得ることも難しいとなると、後は「気持ち」の問題と思います。私の場合は証拠がかなり揃っていたので、弁護士からは「裁判で勝つことはできる」と聞いていました。ただ、当時から起業を考えていたので、自分にとって何にお金とエネルギーをかけるのがベストか考え、訴訟はせず、次の仕事や起業準備にまい進しました。
自分にとって、ベストな選択を
「交通事故にあってしまいましたね」私はパワハラ被害にあった候補者の方にこのようにお伝えしています。
会社にとって良かれと思うことを上司に主張しても、その上司が先に述べた「自己愛性パーソナリティ障害」だと、パワハラにあってしまう可能性があります。そして、事前にその上司がパワハラ気質かどうか見抜くことは非常に難しく、プロのカウンセラーでも時間がかかるといいます。つまり、完全に「予期せぬアクシデント」なのです。
パワハラにあう人は正義感が強く、人の痛みがわかる優しい人が多いと思います。一生変わることのないパワハラ上司がいる組織などさっさと見切りをつけ、次のステージへと進みましょう。決して自分を責めたり、命をあきらめたりしないでほしいと思います。
パワハラ問題は、その特性上なくなることはないと思いますが、パワハラを受ける側が「賢くかわす」術を身に付け、苦しむ人が少しでも減ってほしいと思い、執筆させて頂きました。ご参考になれば幸いです。